Capacity Planning

リソース枯渇の予測と事前対応で「突然のサーバーダウン」を防ぐ

よくあるシナリオ:年末セール当日にサーバーダウン

ECクライアントで年末セール当日の午前10時、突然サイトが落ちる。DBのディスクが満杯。緊急で追加ストレージを発注するが調達に3日かかり、数千万円の機会損失。翌日の会議で「なぜ予測できなかったのか」と責任追及。

よくある課題
  • 毎日少しずつ増えていたのに誰も気づいていなかった
  • 緊急調達で通常の3倍のコストが発生
  • 深夜・休日に全員招集で対応する消耗戦
  • ユーザーへの影響→ブランド毀損→解約リスク

3ステップで「突然の障害」を防ぐ

キャパシティプランニング 3 ステップ

1現状計測

CPU・メモリ・ストレージ・帯域の使用量をメトリクスで収集。過去トレンドを可視化。

↓
2成長予測

線形・指数・季節性モデルで将来のリソース需要を予測。枯渇時刻(Time to Exhaustion)を算出。

↓
3調達計画

リードタイムを考慮して事前に発注・スケールアウト。コスト最適化も同時に検討。

核心概念を押さえる

枯渇予測(TTE)たとえるなら「燃料計の「あと何km走れるか」」

Time to Exhaustion。現在の使用量と成長率から「何日後に上限に達するか」を計算。これが計画の出発点。

例:現在50GB、毎日2GB増加、上限100GB → (100-50)÷2 = 25日後に枯渇

成長モデルたとえるなら「需要予測の手法」

線形(毎月一定増加)・指数(毎月倍増)・季節性(年末に急増)の3パターン。間違ったモデルを選ぶと予測が大きく外れる。

例:SNSサービスが急成長中→線形ではなく指数モデルで予測しないと大幅に過小評価

リードタイムたとえるなら「発注から納品までの時間」

リソース調達に必要な期間。「枯渇予測日 - リードタイム - バッファ」が対応開始期限。これを知らないと手遅れになる。

例:クラウド新インスタンス: 即時。オンプレサーバー: 2〜4週間。

バッファ(安全余白)たとえるなら「安全在庫」

上限の20〜30%は余裕として確保する。ピークトラフィックへの対応とウォームアップ時間を考慮。

例:最大使用量80GBのディスク → 100GBを調達(20%バッファ)

Auto Scaling vs 事前スケールたとえるなら「エアコンの自動vs手動」

Auto Scalingは数分かかる。年末セールのような急激な増加には事前スケールが必要。組み合わせが重要。

例:大型セールの1週間前から段階的にキャパシティを増やし、当日に最大規模にしておく

閾値アラートたとえるなら「燃料警告灯」

上限の80%到達時点でアラートを発火させる。100%になってから知るのでは遅い。Prometheusで自動設定可能。

例:ディスク使用率80%でSlack通知 → チームが2週間前に対処できる

キャパシティ予測チャート(CPU使用率 %)

0255075100上限 90%予測枯渇予測1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月実績予測
行動タイミング: 枯渇の 2〜3ヶ月前には調達・スケールアップを開始する必要がある。リードタイムを考慮した計画が重要。

AI で SRE の仕事はどう変わるか

これまで人がしていた作業
  • スプレッドシートで線形予測(季節性を見逃す)
  • 手動で過去データをグラフ化して目視判断
  • 大型イベント前の手動キャパシティレビュー
  • インシデント後に「なぜ予測できなかったか」の振り返り
AI が担う作業
  • 季節性・外部イベントを考慮したMLベース需要予測(AWS Predictive Scaling)
  • 過去パターンから自動スケールスケジュールを提案(Google Cloud Autopilot)
  • 複数リソースの枯渇リスクを統合スコアリング(Datadog Forecast)
  • ビジネスカレンダーと連動した自動プロビジョニング(Azure AI capacity)
人に残る役割
  • 新規ビジネスイベント・プロモーション情報の提供
  • コスト上限・調達承認の最終判断
  • AIモデルが見落とした外部要因の考慮
  • 長期アーキテクチャ設計(スケール戦略の方向性)

主なツール:AWS Predictive Scaling、Google Cloud Autopilot、Datadog Forecast、Azure AI、Spot by NetApp

この先の見通し:2027年にはAIがビジネス計画(売上目標・マーケティングカレンダー)を読み込み、インフラ需要を自動予測・プロビジョニングする完全自律型キャパシティ管理が実現。人間の介入は異常値のレビューと大型投資の承認のみになる見込み。

導入による効果の目安(業界の一般的な傾向)

キャパシティ起因障害
ゼロ
計画的対応で完全防止
インフラコスト削減
-25%
過剰プロビジョニング防止
緊急調達コスト
-80%
計画調達vs緊急調達の差
大型イベント成功率
+100%
セール・キャンペーン対応